『FUJIFILM フィルムシミュレーション完全読本』を読んだ感想と要約
先日『FUJIFILM フィルムシミュレーション完全読本』を読みました。
発売当初はニコンをメイン機として使っていたため、それほど興味がわかなかったのですが、いざ富士フイルムをメイン機として持つようになると、ぐんぐん興味が湧いてきて購入してみました。
富士フイルムのミラーレスカメラを使っている人なら、読めば必ず視野が広がる一冊となっているので、購入を強く勧めるのですが、せっかくなので自分なりの解釈と作例も交えながら要約しようと思います。
ちなみにKindle版はこちらから。ぼくも本はKindle派ですが、この本は写真集の側面もあるので、なるべく紙面で見ることをお勧めします。

⚠️ この記事はネタバレを含みます。
この本の魅力|結論「フィルム写真家としての視点が学べる」
この本を一言で表すなら、視点が増える本です。
デジタルカメラしか触ったことのない人でもわかりやすく、フィルムの歴史やパラメータの考え方といった内容が書かれているので、フィルム写真家としての視点を学ぶことができる本になっています。
カジュアルに写真の歴史を学びながら、それを実機に搭載されたソフトウェア(フィルムシミュレーション)に置き換えたケーススタディができるので、非常に腹落ちがしやすい内容となっています。

中でも、ぼくが特に勉強になったと感じたポイントを2つ、まとめました。
フィルムを真似ているわけではない
そもそも、今更説明するまでもないかもしれませんが、「フィルムシミュレーション」とは富士フイルムのミラーレス機(XマウントおよびGFXマウント)に搭載されているカラー設定のことです。
各社のミラーレス一眼カメラの中でも、フィルムシミュレーションが特別視されていることも多いですが、誤解を恐れずに言えばカラー設定の一種にすぎないことは間違いありません。
他社と同様に、デジタル信号を調整することにより色合いやコントラストを変化させ、ルックに影響を加えるソフトウェアです。

同著では富士フイルムXシリーズの商品企画にも携わったご経験のある、フィルム写真家の上野隆氏が興味深い解説をしています。
それは氏が、フィルムシミュレーションに搭載されている「ASTIA」が、実際のフィルム「ASTIA 100F」と比べて彩度が高すぎると不満を持っていた時のことです。
フィルムシミュレーションは、フィルムを実際に開発してきたメーカーが設計しているので、「近似性があるのは確かだ」そうです。
一方で氏の先輩設計者はこう語ります。
フィルムシミュレーションはフィルムの性能をただ真似しているわけじゃないんだよ。逆にいえばそんなことできるわけないだろ(FUJIFILM フィルムシミュレーション完全読本、P.82)
その言葉に氏は感銘を受け、「フィルムシミュレーションに対する考え方が180度変わった」と言っています。

この話を聞いてぼくは、フィルムシミュレーションをフィルムライクな表現に限定して使うのはもったいないと改めて感じました。
富士フイルムのデジタルカメラに魅了されている人は、同じくフィルムライクな表現に魅了されている人でもあることが多いように感じています。
かくいう僕も、当初はフィルムライクな写真が撮りたくてXマウントを購入しました。
しかしフィルムシミュレーションというのは単にフィルムを真似ているだけでなく、その歴代のフィルムが持っていた特徴や役割を現代に落とし込み、デジタルで再設計したものだと捉えると、むしろもっとモダンな表現に活かす方法も見えるのではないかと思います。
今のXマウントはむしろ高画質を楽しめるように設計されており、どのような表現を楽しむのか、シーンや気分に応じて使い分ける選択肢を持つことが、カメラをより楽しむことにつながると感じました。
フィルムシミュレーションを言語化する
この本の最大の魅力とも言えるのが、各フィルムシミュレーションの特徴が言語化されていることです。
そもそも富士フイルムの画質設計の根幹には、「記憶色」と「期待色」という考え方があるそう。
「記憶色」は人が見たまま覚えている色。対して「期待色」は「この被写体はこんな色だろう」という理想に近づいた色。
本書を読むと、「記憶色」と「期待色」のどちらを、それぞれのフィルムシミュレーションが重視しているかがよく理解できます。
例えばPROVIAやPRO Neg. Hiは記憶色系なのに対し、クラシックネガのように緑を深く印象付けるようなフィルムシミュレーションは期待色系といえます。
それに加えてコントラストや向いている撮影シーンなど、各フィルムシミュレーションが持っている特徴を言語化してまとめてくれているため、被写体を目の前にしてどのフィルムシミュレーションを選ぶかを決める力が養われる内容になっています。

ぼくにとって特に印象的だったのが、REALA ACEの解説と開発秘話でした。
REALA ACEは「ネガとしての新しいスタンダードを作る」というコンセプトのもと開発されたとのこと。
ネガのルックを定義づけるというのは、ある意味困難なプロジェクトだったと思います。
というのも、これまでのスタンダードであったPROVIAをはじめとするリバーサルフィルムは撮影した時点で画質が決まるわけですから、ある程度色の方向性を決めることが容易です。
一方でネガフィルムの場合は現像処理の仕方で画質が変化するため、正解はひとつではない。
そんな中で、REALA ACEというフィルムがどのように楽しまれていたかというところに立ち返り、当時のプリント店で一般的だった硬めの画質を目指したそうです。
しかし、硬調すぎると使い勝手が悪くなる。そこで開発者は、シーンタフネス性が崩れないように、ハイライトだけが硬調になるようなバランス感でルックを調整したと本書で語っています。
スタンダードだけど、昔街の写真屋さんで印刷したような硬い画質。これがREALA ACEの本質なんだと思うと、またフィルムシミュレーションの見え方が変わってきます。

自分では理解しきれなかったフィルムシミュレーションの特徴を言語化して理解することで、今までなんとなく選んできたところから、新たな視点が増えたと感じました。
まとめ|富士フイルムユーザーなら絶対オススメの1冊
この記事にはまとめきれませんでしたが、有名写真家のインタビューやこだわり、細かな設定値ごとの写りの違いを示した作例など、様々なトピックスが含まれていて、非常に満足度の高い1冊でした。
繰り返しになりますが、写真の色味が正確にわかる実本でぜひ読んでいただきたいです。
- 著者 : 鈴木文彦
- 出版社 : 玄光社
- 発売日 : 2026/2/25
- 本の長さ : 144ページ
- 価格 : 2,420円
あわせて読みたい
稚拙ながらも自作のフィルムシミュレーションレシピを公開しているので、よかったらご覧ください。









コメントを残す