【“wow”|NOSTALGIC Neg.】記憶を呼び起こすニューカラー、憧れの色
突然ですが「アメリカン・ニューカラー」という言葉をご存知でしょうか?
写真表現の世界において「アメリカン・ニューカラー」は、1970年代のアメリカで起きた、カラー写真を芸術作品に持ち込むムーブメントのことを指します。
カラーフィルム自体は1940年代から開発されていたものの、従来のカラー写真は商業や報道が主な用途。
芸術表現としてはモノクロ写真に及ばないという位置付けでした。
そんな時代背景の中、あえてカラー写真のみを展示する個展が1976年にニューヨーク近代美術館(MoMA)で開かれました。
それ以降、カラーフィルムの技術発展とともに、カラー写真の芸術表現は進歩していったのです。

ニューカラーが起きた当時の作品として、特徴的だったのは、なんでもない身近なものを撮影するという視点にありました。
ガソリンスタンドや駐車場、日用品といった、従来であれば写真に収めないような日常の断片をあえて切り撮るスタイルが広がった背景には、カラー表現ができることによる被写体の拡張があったのではないかと思います。
当時の多くのカメラマンが刺激され、新しい視点を手に入れるきっかけとなった「アメリカン・ニューカラー」は、現代の写真表現の礎を築いたとも言えるでしょう。

さて、前置きが長くなってしまいましたが、NOSTALGIC Neg.はそんなアメリカン・ニューカラーを甦らせたルックがです。
全体的に黄色がかった暖色が乗りやすく、アンバー基調な色味が特徴です。
一方でシャドウ側はブルーが強調され、ハイローの寒暖バランスが異国の懐かしさを感じさせます。
全体的に彩度は低く、コントラストも抑えられています。
これは当時アメリカで普及していた、コダック製のリバーサルフィルムである「コダクローム」の特性によるものです。

そんな背景を理解した上でこのNOSTALGIC Neg.を使うと、自然とどんなものを撮るべきかが見えてきます。
記憶として残しておきたい光景。そして、全くの日常というよりも、少し背伸びした経験。
それはすなわち、追憶であり、異国への憧れでもあります。
ニューカラーという流行がカメラ大国である日本やドイツで起きるのはなく、アメリカで起きたムーブメントだったという歴史が、NOSTALGIC Neg.から感じ取られる、どこともない客観性によるニュートラルな美しさを生んでいるのかもしれません。
少なくとも日本人であるぼくにとっては、よその国の話を聞くときのワクワク感が、このルックには乗っていると思っています。


今回紹介するレシピ“wow”は、そんなアメリカへの憧れを、アメリカの言葉で表現するために名付けました。
しかし、このレシピはあえてフィルムグレインを入れないことにより、ただのノスタルジーだけではない、今の時代にアメリカン・ニューカラーを再現する意味を再考できる余白があるレシピになっていると思います。
NOSTALGIC Neg.を使ったレシピでは、色味をアンバー寄りに思いっきり振ったものも人気かと思いますが、これもぼくは毎度の如く、ちょっと黄緑に振っただけ。
あくまでみたままの光景から逸脱しすぎないのが、好みであり作風です。

ここまでの説明を聞いて、家族写真に向かない理由は見つからないでしょう。
とりあえずいつでも使ってOKなレシピではあります。
ただし、前述の通りコントラストは控えめなので、室内などの薄暗いシーンでは、わかりやすい効果は感じづらいかもしれませんので、その点は注意してみてください。
もしのっぺりしすぎてなんだかなと思う方は、おそらくPRO Neg. Hiの方が好みになるんじゃないかなと。
反対に落ち着いたトーンをこよなく愛する写真家さんにとっては、NOSTALGIC Neg.はいろんなカスタムに派生させたいメインフィルムシミュレーションになるんだと思います。


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